大判例

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広島家庭裁判所 事件番号不詳 決定

少年 L(昭一六・六・二八生)

主文

少年を広島保護観察所の保護観察に付する。

理由

(非行事実とその適条)

少年は、昭和三四年五月初旬頃より同月二八日頃までの間に、強盗致傷、強盗および傷害各一回、恐喝一六回(うち三回は未遂)、(以上いずれもほか一名ないし二名と共謀)、暴行一回の非行をなしたものであるが、その内容の詳細および適用すべき罰条は、すべて、本件少年保護事件記録編綴の少年に対する検察官送致決定書(昭和三四年七月一七日付、同年一一月一〇日付各一通、但し七月一七日付決定書の事実中第六の事実を除く)のとおりであるからここにこれを引用する。

(処遇上の問題点)

少年の家庭は実父母共に健在で、経済的にも比較的恵まれているが、家庭内の人間関係は円滑でない。即ち、父親は家業に専念するの余り家庭を顧る余裕を持たず、寛容さにも欠けている。このため、知能が低く、年令相応の思考判断力のない少年に対して馬鹿者扱い、邪魔者扱いをし勝である。これに対し、母親は逆に少年を庇護するに過ぎる傾きがあり、これが少年と父親との溝を深めると共に、少年の自覚を鈍らせる原因となつている。また、嘗つて父母間に不和を生じていた時期もあり、少年と弟妹との間も親愛感に欠けている等少年を引きつける力の弱い家庭である。

少年の非行歴は既に永く、昭和三一年一一月二四日窃盗非行により審判不開始の決定を受けて以来、同三二年一二月一五日には恐喝により、同三三年一月一四日には窃盗により各不処分の決定を受け、同年二月二七日には恐喝により保護観察処分に付せられている。その間非行内容については特に著しい発展はなく、不良交遊の範囲も変化がないが、次第に罪障感を失い非行性が固定化しているものと認められる。

少年は、知能が低く、魯鈍級の精神薄弱者で、自立性に欠け、活動的で、情緒不安定が著しいので、外部からの刺戟、誘いかけに左右され易く、不良感染性が強い。

以上のとおり、家庭は少年を託するに十分でなく、非行歴永く、罪障感も稀薄で将来非行を繰り返す危険性ありとすれば、この際少年院に収容して矯正教育を施す必要も十分考えられるところではあるが、少年は昭和三四年六月一二日逮捕されて以来、翌三五年一月五日まで二〇九日間にわたり、身体を拘束され、その間代用監獄、少年鑑別所、拘置所を転々としたため可成りの精神的苦痛を受けて疲弊が著しいので、これ以上施設に収容しても矯正の実を挙げ得ることを期待し難いばかりでなく、却つて、悪い結果の生ずる危険性も考えられる。幸い、上記拘束によつて相当の自已処罰感を体得しているし、父親も本件の係属を契機として従来の態度を改める意欲を示しているので、保護観察所の一層徹底した補導をも期待して、在宅保護に委ねるを相当と思料する。

なお、少年については、上記のとおり既に保護観察決定がなされているが、この際少年の心機を新たにさせ、且つ保護観察所の指導にも徹底を期待すると共に、本事案の重要性をも考慮して本件を以て改めて保護観察に付することとする。

よつて、少年法第二四条第一項第一号、少年審判規則第三七条第一項を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 川上正俊)

別紙一 (家裁の検察官送致決定その一)

主文

本件を広島地方検察庁の検察官に送致する。

理由

本件は罪質及び情状に照して刑事処分を相当と認めるので少年法第二〇条により主文の通り決定する。

罪となるべき事実

少年は

第一、昭和三四年五月初旬某日午前七時頃、T(一六年)と共謀の上、広島市○○○町○丁目×××番地○田○明方前附近に同人(一四年)を呼出して金を貸せと要求し、之に応じなければその身体に危害を加える気勢を示して畏怖させ、因つて即時同人方においてその母親より同人の少年等に対する借用金返済名下に現金千円を交付させて喝取した。

第二、同月初旬某日午前六時頃、Tと共謀の上、広島県安佐郡○○町○○×××番地M方前附近に同人(一七年)を呼出して金を貸せと要求し、之に応じなければ何時如何なる危害を加えるかも知れぬ旨暗示して畏怖させ、因つて即時同所において同人より現金千円を交付させて喝取した。

第三、同月二日午後七時五〇分頃、前記同町○○、○○バス停留所附近において、バス待合中のK(一六年)、H(一六年)の両名に対し、「じろじろ見た。」と因縁をつけ、Hの顔面を手拳で一回殴打し、更にKの顔面、腹部を手拳で殴打する等夫々暴行を加えた。

第四、同月五日午後六時頃、Tと共謀の上、前記同町○○、○川木工所前附近路上において、Sに対して金を貸せと要求し、之に応じなければ何時如何なる危害を加えるかも知れぬ旨暗示して畏怖させ、因つて即時同所において同人より現金千五百円を交付させて喝取した。

第五、同月六日頃の午後三時頃、Tと共謀の上、広島市○○町○○中学校正門附近において、A(一七年)に対し、同人がBを殴打した事に因縁をつけた上、Bに医者代を出してやれと要求し、前記同様の手段方法で畏怖させ、因つて翌七日頃の午前八時過頃、広島市○○町○丁目○和染工々場西側路上において同人より現金千円を交付させて喝取した。

第六、同月一七日午前一一時頃、Tと共謀の上、広島県安佐郡○○町○○、○小学校講堂二階において、C(一七年)に対し些細な事に因縁をつけて手拳で腹部を数四殴打して以て暴行を加え、更にD(一八年)に対しても同様因縁をつけ手拳で殴打するなどの暴行を加えた上金を貸せと要求して畏怖させ、即時同所において同人より現金二百円を交付させて喝取した。

第七、同月二〇日頃の午前五時半頃、前記Tと共謀の上、前記同町○○×××番地B方附近に同人(一七年)を呼出して金を作れと要求し、之に応じなければ何時如何なる危害を加えるかも知れぬ旨暗示して畏怖させ、因つて同日午後二時頃広島市○○○町○丁目バス終点附近路上において同人より現金千円を交付させて喝取した。

第八、同月二五日午後二時頃、前記Tと共謀の上、広島市○○町○丁目お好焼屋○倉○方裏空地にE(一六年)を呼出して因縁をつけた上腕時計の交付方を要求して畏怖させ、因つて即時同所において同人より腕時計一個(時価三千円位)を交付させて喝取した。

第九、同月二四日午後三時半頃、前記Tと共謀の上、広島県安佐郡○○町○○○、○○小学校々庭において、F(二〇年)を呼止めていきなりその顔面等を手拳で乱打した末、「金をこしらえ。」と要求して畏怖させ、因つて翌二五日午後四時半頃、同町○○○×××番地の同人宅において、同人より現金二千円を交付させて喝取した。

第一〇、同月二五日午後七時頃、前記Tと共謀の上、前記同町○○、○小学校構内にG(一八年)を連行し、同所において同人に対し殴る蹴る又は野球用バットで殴打する等の暴行を加えた上、金を貸せと要求して畏怖させ、因つて同日午後九時頃、同町○○○橋附近において同人より現金二千円を交付させて喝取し、且つ前記暴行に因り同人に対して治療に約二週間を要する頭部挫創等を蒙らせて傷害した。

第一一、同月二六日頃の午前七時頃、前記Tに共謀の上、広島市○○○町○丁目×××番地J方において、同人(一五年)に対して金を貸せと要求し、之に応じなければ何時如何なる危害を加えるかも知れぬ旨暗示して畏怖させ、因つて即時同所において同人よりスパイク靴一足(時価七百円位)を交付させて喝取した。

第一二、同月二六日午後九時五〇分頃、前記T他一名と共謀の上、広島県安佐郡○○町○○、○○土手にN(一八年)を呼出して五千円出せと要求し、その腹部を手拳で殴打したが同人が拒み続けたので金員喝取の目的を遂げなかつた。

第一三、同月二六日午後一〇時頃、前記T他一名と共謀の上、前記同町○○××××番地の六〇方附近に同人(一七年)を呼び出してカメラを貸せと要求し、之に応じなければ何時如何なる危害を加えるかも知れぬ旨暗示して畏怖させ、因つて即時同所において同人よりカメラ一台(時価七千円位)を交付させて喝取した。

第一四、同月二六日午後一〇時一〇分頃、Tと共謀の上、前記同町○○○カトリック教会裏路上において、Q(一八年)に対し腕時計を貸せと要求し、殴る蹴るの暴行を加えたが、同人が拒み続けた末逃走したので金品喝取の目的を遂げなかつた。

第一五、同月二七日午後一時頃、前記Tと共謀の上、前記同町○○、○○土手にS(一五年)を呼出して金を出せと要求し、之に応じなければその身体に危害を加える旨告げて脅迫し、その反抗を抑圧した上同人をタクシーに乗せて家人不在中の同町○○○×××番地の同人方に案内させ、同所において同人の父R等の所有に係る電気コタツ一個他衣類雑品二六点位(時価合計一万七百円位)及び現金三百円位を物色持去つて強取した。

第一六、同月二七日午後六時半頃、前記Tと共謀の上、広島市○○町○丁目○○銀映東側空地において、U(一六年)に対し金を五千円作れと要求し、之に応じなければその身体に危害を加える気勢を示して畏怖させ、因つて同日午後七時頃、同所において同人より衣類三点(時価合計二千円位)を持参交付させて喝取した。

第一七、同月二八日午後七時半頃、前記T他一名共謀の上、広島市○○町○○神社前附近を通行中の店員V(一八年)を○○神社境内に連込んで取囲み「金を出せ、出さぬと刺すぞ。」と申向けて脅迫し、その反抗を抑圧して所持金一万六千七百円を強取すると同時に同人に対して殴る蹴るの暴行を加え、因つて同人に対して全治に四日間を要する左顔面打撲傷を蒙らせて傷害した

ものである。

適用すべき罰条

前記第一、第二、第四、第五、第七、第八、第九、第一一、第一三、第一六の各所為に付刑法第二四九条、第六〇条

前記第三の所為に付、刑法第二〇八条

前記第六の所為に付、刑法第二四九条、第二〇八条、第六〇条

前記第一〇の所為に付、刑法第二四九条、第二〇四条、第六〇条

前記第一二、第一四の各所為に付、刑法第二四九条、第二五〇条、第六〇条

前記第一五の所為に付、刑法第二三六条、第六〇条

前記第一七の所為に付、刑法第二四〇条前段、第六〇条

(昭和三四年七月一七日 広島家庭裁判所 裁判官 平佐力)

別紙二 (家裁の検察官送致決定その一一)

主文

本件を広島地方検察庁の検察官に送致する。

理由

本件は罪質及び情状に照して刑事処分を相当と認めるので少年法第二〇条により主文の通り決定する。

罪となるべき事実

少年はT(一六年)と共謀して、

第一、昭和三四年五月上旬某日午後六時頃、広島県安佐郡○○町町役場前路上に於て、通行中のW(一七年)を呼び止めて腕時計を貸せと要求し、之に応じなければ何時如何なる危害を加えるかも知れぬ旨暗示して畏怖させ、よつて即時同所に於て同人より腕時計一個(時価五、〇〇〇円)を交付させて喝取した。

第二、同月中旬某日午後二時半頃、広島市○○町国鉄○○線○○駅便所裏にX(一七年)を呼び出して些細な事に因縁をつけた上金品を強要し、次で同人を同町三丁目第二○○○パチンコ店裏庭に連行し、同所に於てその顔面を手拳で殴打して、畏怖させたが、他人から制止された為金品喝取の目的を遂げるに至らなかつた。

第三、同月二六日午後一〇時前頃、前記○○町○○、○○土手にY(一七年)を呼び出して金品を強要、いきなり同人の右腕を捻じ上げた上その要求を拒めば更に危害を加えることある旨を告げて畏怖させよつて即時同所に於て同人より腕時計一個(時価三、〇〇〇円)を交付させて喝取した。

ものである。

該当する罰条 第一、第三所為に付刑法第二四九条第六〇条、第二所為に付刑法第二四九条、第二五〇条、第六〇条

(昭和三四年一一月一〇日 広島家庭裁判所 裁判官 平佐力)

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